引っ越しの日の小さなお守り
市外から旭区へ転勤することになった、数年前の春のことです。
引っ越し当日、荷物を運び出していると、近所に住むご高齢のご夫婦がわざわざ顔を見に来てくださいました。
普段から顔を合わせれば挨拶を交わす関係でした。立ち話をするほどではありませんでしたが、朝の「おはようございます」や、夕方の「お帰りなさい」が、ささやかな日常の一部になっていました。
「寂しくなるなあ」
ご主人がそう言い、奥様は静かにうなずいておられました。その言葉に、思っていた以上に胸が揺れました。
自分では気づかないうちに、この町の風景の一部になっていたのかもしれません。
帰り際、奥様が小さな紙袋を手渡してくださいました。「大したもんやないけど」と少し照れたように笑いながら。
中には手作りのお守りと、「体に気をつけて」と書かれた短い手紙が入っていました。
その文字を見たとき、胸が熱くなりました。特別に親しいわけではなくても、日々の挨拶の積み重ねが、こんなにも温かい形になって返ってくるのだと知りました。
旭区での新しい生活は、期待と同時に不安もありました。慣れない道、知らない人たち。心細くなる夜もありました。
そんなとき、あの手紙の文字を思い出します。「体に気をつけて」。その一言が、今でも背中をそっと押してくれています。
<編集追記>
しまいきれない春の想い出は、場所が変わっても消えることはないのかもしれません。サブクロに預ける荷物のように、あの日のぬくもりも、新しい暮らしへ一緒に運んでください。
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引っ越し当日、荷物を運び出していると、近所に住むご高齢のご夫婦がわざわざ顔を見に来てくださいました。
普段から顔を合わせれば挨拶を交わす関係でした。立ち話をするほどではありませんでしたが、朝の「おはようございます」や、夕方の「お帰りなさい」が、ささやかな日常の一部になっていました。
「寂しくなるなあ」
ご主人がそう言い、奥様は静かにうなずいておられました。その言葉に、思っていた以上に胸が揺れました。
自分では気づかないうちに、この町の風景の一部になっていたのかもしれません。
帰り際、奥様が小さな紙袋を手渡してくださいました。「大したもんやないけど」と少し照れたように笑いながら。
中には手作りのお守りと、「体に気をつけて」と書かれた短い手紙が入っていました。
その文字を見たとき、胸が熱くなりました。特別に親しいわけではなくても、日々の挨拶の積み重ねが、こんなにも温かい形になって返ってくるのだと知りました。
旭区での新しい生活は、期待と同時に不安もありました。慣れない道、知らない人たち。心細くなる夜もありました。
そんなとき、あの手紙の文字を思い出します。「体に気をつけて」。その一言が、今でも背中をそっと押してくれています。
<編集追記>
しまいきれない春の想い出は、場所が変わっても消えることはないのかもしれません。サブクロに預ける荷物のように、あの日のぬくもりも、新しい暮らしへ一緒に運んでください。