決めなかった「次いつ会う?」

(住吉区 50代 男性)

高校三年の春、クラス替えもないまま、そのまま卒業の日を迎えました。
三年間、同じ顔ぶれで過ごしてきた教室とも、あっさりとした空気のまま別れることになりました。泣き崩れるほどでもなく、盛大なセレモニーがあるわけでもなく、思っていたよりも静かに終わった卒業式でした。

帰り道、いつも一緒に帰っていた子と並んで駅まで歩きました。特別な話はしませんでした。進学先のことや、引っ越しの準備のこと、他愛のない会話が続きます。春の風が少し冷たくて、制服の袖を引き寄せながら歩いていたのを覚えています。

駅の改札前で立ち止まり、「次、いつ会う?」と自然に口にしました。相手も「うーん、また連絡するわ」と笑いました。
ちゃんと日付を決めることもなく、「じゃあね」と手を振って別れました。

あのときは、それで十分だと思っていたのです。いつでも会える気がしていました。けれど結局、それから一度も会えていません。

連絡を取ろうと思えば取れたはずです。けれど、時間が経つほどに、あの日の曖昧な約束が、心のどこかに引っかかったままになりました。決めなかった日程。交わしたままの言葉。その小さな“未完”が、春になるたびに思い出されます。

別れは大きな出来事よりも、こうした曖昧さの中に残るのかもしれません。はっきり終わらなかったからこそ、今もどこかで続いているような気がするのです。


<編集追記>
しまいきれない春の想い出は、決めなかった約束の形で胸に残り続けます。
あの日の「またね」は、今もどこかでほどけないままなのかもしれませんね。
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